ホログラムを作成するための記録媒体に必要なスペック(空間分解能)
の続きです。ホログラムを作成するための記録媒体は歴史的に銀塩感光材料が使われてきましたが、下図のように二つの光束の干渉を記録する時に、どのくらいの空間的な分解能が必要なのかを具体的に計算してみましょうか。

これも前記事で紹介した書籍からの図です。今波長λを持った二つの平面波が法線に対してそれぞれ角度θで交差している空間に感光材料(銀塩感光材料でなくてもよい)を置いて、生成されている干渉縞(空間的な強度変化ないし分布)を記録するとして、そのピッチないし空間周波数は、図の右に示した式で得られます。

上図のような条件では、縞の空間周波数は1ミリあたり2000本を超えるということになります。なお単純化のために、Arイオンレーザーの波長は500nmとしました。本当は514.5nmでしたね。銀塩感光材料としてはかなりの高空間分解能になりますね。一昔前に白黒フィルムとして一世を風靡したKodakのTri-Xあたりで50本/mm程度でしたからその40倍ですね。そういう感光材料が昔は入手可能でした。筆者らは、Agfa-Gevaert社の10E75とか10E56を使ってホログラムを記録していました。今ではもう入手できません。生産していませんから。なぜ作らなくなったかというと、需要がなくなったからですね。Optical HolographyやHolographic Interferometryが盛んに行われていたのは数十年前の話です。一般的な銀塩感光材料はまだ入手可能なんでしょうかね?あ、銀塩感光材料の必要はないといいましたが、最近の高画素数のデジタルセンサーでどの程度の空間分解能が得られるかを試算しておきましょうか。例えば、Canonの最新フルサイズセンサーカメラEOS R1を取り上げると、そのCMOSセンサーは、昔の35m/mフィルムの一コマサイズなので、
36mm×24mm
です。空間分解能(この場合は画素数)は、静止画で典型的には、
C-RAW:約2400万(6000×4000)画素
ということですから、
横方向(水平方向ともいふ)の空間分解能は、
6000/36 = 166.6
となります。縦も同じで、
4000/24 = 166.6ですね。ところが干渉縞を記録する場合の空間分解能は、1mmあたりに何本のline pairが使えるかですから、この数字の半分の空間分解能しかありません。なので、1mmあたり、83.3本ですね。意外に低いですね。10E75には遠く及ばないです。どうしても近代的なセンサーでホログラフィックな記録を行いたい場合は、要求される空間周波数を下げればいいのです。波長はいじれませんから、角度θを小さくするような光学系の工夫で実現している例もあったようです。最近見かけないです。他に別の媒体を使う方法もありますが、そのうち別記事で書くかもしれまsん。
さて、最後に空間分解能は高いのですが、感度は低い。こうした関係は、トレードオフと呼ばれていて、色々な場面で工学的問題ないし調整どころとして登場します。

有名なものでは、アンプ(増幅器)の帯域とゲインの関係などがあります。最下段に書いたのは、トレードオフが成立しない例で、集積回路(もはや死語)における製造線幅と動作速度や消費電力の関係です。集積度を上げるために線幅小さくすると、動作速度は上がり、消費電力は下がるという”いいことずくめ”の関係がなりたちます。製造できればですけどね。また冷却の問題も発生します。それぞれもはや限界に近づいています。
他にもトレードオフの関係があったら是非コメント下さい。


コメント