#1の続きです
少しだけ、LASER光の復習をします。ちなみにLASER(ないしLaser)をレーザーと呼んだり書いたりしますが、他方レーザと呼んだり書いたりもします。末尾の音引き(延ばす音)を書かずに省略するのは、”機械系”の方々です。筆者は長年そのように理解していましたが、
という説もあります。ま、工学系ならば、JIS規格様(今はISOだっけ?)に書かれていたらそれに従わないわけにはいかないのですが、それは原則でありこのブログでは意識しては統一しません。機械屋さんと電気屋さんの違いとかも語るときりがないのですが、また余談ばっかりしていると長くなりすぎますので、この件はここまでくらいにして、先を続けます。さて、

ということで光路差がゼロであれば、当然1+1=2の光強度になりますが、光路差は常にゼロではなく増えたり減ったりします、それを波長の単位で計測しようとすると光路差がコヒーレンス長の範囲にないと綺麗な干渉縞つまり可視度が高い縞(Visibility)が得られず、位相差の計測が困難になります。ごくラフな説明をすると、コヒーレンス長というのは光源から出てくる一個の光子の平均長さと考えられます。なので、これがmm単位なのか、cm単位なのか、m単位なのかで干渉計測のしやすさは激変します。コヒーレンスは、

干渉計を組んだ時に有意なのは、”空間的コヒーレンス”ということは分かりますよね。
マイケルソンの干渉計で、


上図でプログラムというのは、以前の記事での”Fringe”プログラムです。
レーザの応用分野は、通信、加工、計測、その他と多岐にわたります。スライドでまとめると、


上図のコーナーキューブというのは、月と地球間の距離をcm単位で計るプロジェクトで使われたもので、

コーナーキューブというのは光学素子で、入射光に対して正確に逆方向の反射光を返すという性質があり、地球から月面においたコーナキューブを狙ってパルスレーザーを撃ち、返ってきた微弱な反射光を検出し、往復の時間からその時の”地球と月の間の距離”を計ることができます。って、これは1960年代の仕事でしたね。詳しくは、
計測の精度を上げるには、最終的に時間計測に持ち込むのが吉です。これもその一例ですね。さて、本当に本論に戻ります。
計測への応用としては、

というようにまとめられますが、上図のOff-axis Holographyについて解説します。典型的な光学系は、

右上からのレーザ光をビームスプリッタで二つの光に分けます。AとBですね。ビームスプリッタというのは光波を振幅で分けるもので、他に波面で分ける方法もあります。要は、図にObjectとしている反射物体に物体光をあて、他方物体の擾乱を受けないままの参照光を作り出します。で、Hologramという位置に置いた写真乾板(ガラス板に銀塩感光材料を塗ったもの)を置きます。正確に言うとまだHologramではありません。この位置で、物体からの反射光(物体光)と参照光の”干渉”を適切な露出時間で乾板に当てます。それを現像処理して初めてHologramになります。波面分割の光学系は、

上図の下には、実際のHologramを撮影した画像が見えています。これらの図は、“Optical Holography”という書籍から引用しています。Hologramの作成と再生は、

このようなステップで行われます。再生のステージで、観察者が観ることができるのは、作成時の物体光の正確な再現ですので、虚像は現物がそこにあるかのように浮かび上がります。正確な再現というのが重要で、光波単位での再現ですので、干渉計測へ応用ができるわけです。ここで、先ほど述べた”銀塩感光材料”へ要求されるスペックを概算しておきましょう。つまり、

次のような2光束干渉を考えます。二つの平面波が角度θで交差している状況です。この時観察される干渉縞のピッチ(周期)を計算してみようということです。

具体的な条件を設定しましょう。

マジで必要なんです。綺麗なホログラムを作るためには…..。で、実際そのスペックを満たした写真乾板を使っていました。当時はね。今となっては入手できません。KodakもAgfa-Gevaert も生産していません。2社とも存続はしているようです。普通の銀塩感光材料たとえば写真フィルムは、解像度はミリあたり50本程度です。(いわゆる白黒フィルムですね。代表的なのはKodak Tri-X iso 400)そのかわりISO感度は普通でも400くらいはあります。この差はなんだろうか?というと、

典型的なトレードオフです。解像度はめちゃくちゃ高いけど、感度は低いということです。上の例での増幅器というのはアンプですけど、アンプの場合はゲイン(増幅度)とそのゲインが保てる帯域とでトレードオフの関係があります。最後の集積回路云々は例外で、線幅を細かくすると、動作速度は向上、消費電力は少なくなり、集積度は当然高まり、良いことずくめです。が、この流れにも限界が来ていて、製造限界に近くなっています。
さて、ホログラムを作成するために使っていた写真乾板がどのくらいの感度だったかというと、安全灯として印画紙用のライトが使えましたから程度でした。
ここまでで光波の記録と再生ができるということが分かりましたが、その特長を利用して、波面間の干渉を観察し、そこに現れる干渉縞を利用することでレーザ光の波長程度の精度での計測ができます。それがホログラフィ干渉法なんですが、具体的は次回以降で。Holographic Interferometryですね。
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